声明、見解等

●声明「インド太平洋地域に分断と緊張激化をもたらす開発協力大綱の撤回を求める」

 

■声明:「グローバルサウス(途上国の人びと)との連帯を追求しよう
     ~「開発協力大綱」改定ではなく新たな援助の枠組みこそ重要だ!」


●寄稿「日立の英ウィルヴァ原発建設と公金投入問題」(福永正明)

 

●寄稿「国益と安全保障を強調する『開発協力白書』を批判する」(石橋和彦)

 

●日印原子力協定発効抗議声明(日印原子力協定国会承認反対キャンペーン)7.20

■7月20日、平松賢司駐インド大使とスブラマニヤム・ジャイシャンカル外務次官が公文書「口上書」を交換し、協定が発効しました。

■日印原子力協定国会承認反対キャンペーンは、抗議声明を発出し、7月21日、首相官邸、駐日インド大使館あてに送付しました。

 

●原発メーカー3社に対する原発輸出の中止を求める要請書(2017.3.27)


 
       「日印原子力協定」署名に対する抗議声明

                                    2016年11月11日
内閣総理大臣 安倍晋三殿
外務大臣   岸田文雄殿

          「日印原子力協力協定」署名 抗議書
 
 本日(2016年11月11日)、日印両首相は首脳会談を東京で開催、「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定(以下、本協定)」に署名した。私たち「日印原子力協定阻止キャンペーン2016」は、両政府の蛮行に強く抗議する。
 本協定署名は、核廃絶へ向かう世界の流れに逆行し、「民衆の声、核廃絶への世界の願い」を踏みにじるもので、到底許されるものではない。
 2010年6月の交渉開始以来、本協定について、多くの問題が国内外より指摘されてきた。特に、核拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)に加盟せず二度も核実験を強行したインドとの本協定は、原発輸出だけでなく、核兵器増産を許す内容である。本協定の署名は、日本がこれまで戦後一貫して堅持した「核廃絶とNPTを基本とする外交」を放棄することを意味する。
 広島・長崎両市長の11月7日付「要請文」の通り、両被爆地の人びとの怒りは強い。さらに、東電福島第一原発の被災避難の人たちも、事故収束なき状態での原発輸出を厳しく批判している。 
 かねて私たちは、インドの原発反対・核兵器反対運動と協力し、交渉の即時中止を求め活動してきた。今後も日印運動の交流と連帯を強化し、国際支援を得て引き続き反対運動を展開する。
 本日を「日印原子力協定反対・世界同時行動デー」として、首相官邸前、大阪など国内各地、インドの輸入原発建設予定各現地(ジャイタプール、コヴァダ、クーダンクラム)、デリー、ムンバイなど各都市、さらにイギリス、アメリカ、ドイツにて大規模抗議集会を開催、抗議メッセージ発表を行う。
 世界の人びとは、安倍・モディー両首相による締結への決断を許すことはない。重ねて、本協定署名に抗議する。
 私たちは今後、国会の承認手続きにおける徹底した情報公開での慎重審議を求め、志しを共にする多くの衆参議員と協力し、「承認阻止」のために闘う。

 日印原子力協力協定の締結反対! 日印原子力協力協定承認阻止!
 「日印原子力協定阻止キャンペーン2016」 

 
        「開発協力大綱」閣議決定に抗議する声明
                                2015年2月14日
            戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション(COA-NET)

2015年2月10日、安倍内閣は政府開発援助(ODA)の基本方針を示したODA大綱に代わる「開発協力大綱」を閣議決定した。
私たちは、この「開発協力大綱」が日本のグローバル資本の利益である「国益」確保のために市民の税金を注ぎ込むことを定めたものであり、もはや「援助」ですらないことから、この改定に怒りを込めて抗議するとともに、ODAそのものの廃止を要求するものである。
安倍内閣は、外交・防衛の基本方針を定めた「国家安全保障戦略」(2013年12月閣議決定)において、「我が国の平和と安全」「経済発展を通じた更なる繁栄」「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序の維持・擁護」を「国益」と規定し、これらの「国益」を守る国家安全保障の目標として「必要な抑止力を強化し、我が国に直接脅威が及ぶことを防止するとともに、万が一脅威が及ぶ場合には、これを排除し、~」と定めた。つまり、政府が「普遍的価値やルール」に反するものと決めつければ、それを「国益」を侵すものとみなし、排除や打倒の対象とすることを宣言しているのである。そして、「本戦略は、国家安全保障に関する基本方針として、海洋、宇宙、サイバー、政府開発援助(ODA)、エネルギー等国家安全保障に関連する分野の政策に指針を与えるものである」として、「ODAの積極的・戦略的活用」を謳ったが、その具体化がこの「開発協力大綱」である。
また、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」で「『新興国を中心にした成長市場』の獲得のため『ODAの積極的活用』」が謳われていること、「開発協力大綱」の原案に対して経団連からの「『要請主義』に基づくことなく、わが国官民の提案によるプロジェクトを相手国政府と一体になって積極的に推進していく旨、新大綱に記載すべきである」という要望等、財界から執拗な要求があったことからも、「開発協力大綱」は、原発を始めとする「システムインフラ」の輸出を狙うグローバル資本の要請に応えたものであることは明らかである。
そして、パブリック・コメントに数多く寄せられたこれらの問題を危惧する市民からの声をことごとく無視して「開発協力大綱」は閣議決定された。
「軍隊に対する非軍事目的の援助」などあり得ないのが国際常識である。安倍首相が1月の中東歴訪中に表明した「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国への総額2億ドルの人道支援」としてのODAは、2名の邦人が殺害される原因となった。また、日本政府は、2013年にフィリピンの沿岸警備隊に対して、ODAを使った巡視船10隻の供与を約束したが、同隊は2か月前には台湾の漁船を銃撃し、死者まで出しているのである。さらに、「新大綱」は、「安定・安全への脅威は、経済社会発展の阻害要因となることに鑑み、海上保安能力を含む法執行機関の能力強化~必要な支援を行う」として、「平和構築やガバナンスも含め、『開発』を広くとらえる」と定義しているが、これは『開発』と称する『軍事』や『治安』に他ならない。これが適用されると、巨大プロジェクトや原発建設に反対する市民に向けられる弾圧にODAが使われることになる。
また、「要請主義」は、道路やダムなどのインフラ整備が日本から押し付けた「援助」ではなく、形の上だけでも被援助国の「要請」を受けて実施されることを担保する手続きであった。インドネシア・コトパンジャン・ダム裁判は、こうした旧来の「援助」ですら実際には日本のコンサルタントが計画策定段階から関与し、その結果、ダム建設によって現地住民と自然環境に甚大な被害をもたらしたことを明らかにしたが、規制を無くした「新大綱」は、一層の住民被害をつくり出し、環境破壊を引き起こすに違いない。
このように最低限のルールでさえ葬り去った「開発協力大綱」は、グローバル資本の権益のために、戦争推進のために、私たち市民の税金などを政府が自由に使うための方針である。私たちは、こうしたODAに対して、修正ではなく即時廃止を求めるものである。


 

日印原子力協力協定の原則合意に断固抗議する(5団体共同声明)

 インドを訪問した安倍晋三首相は、2015年12月12日にインド政府のナレンドラ・モディー首相との首脳会談後、共同声明を発表した。
 懸念された「日印原子力協力協定の調印」には至らずとも、「協定は合意に達した」ことが明言された。しかし、日本政府側が求めて続けてきたとされる「再核実験時における協力停止」や「使用済み核燃料の再処理容認」問題などについては、何らの明記もない。
 インドは、核拡散防止条約(NPT)に加盟しないまま2度の核実験を続け、さらに核兵器増産をめざしている。今回の実質合意により、ヒロシマ・ナガサキでの被爆を経験した日本が、あたかもインドを正式な六番目の「核兵器国」として容認することになる。それは、戦後70年一貫して「核兵器廃絶」を外交の柱とした日本が、NPT体制を崩壊させる重大な政策転換である。
 本合意が、核廃絶へ向かう国際社会での多くの人びとの努力を踏みにじることは明らかである。安倍総理の訪印直前に広島市長と長崎市長の連名による「協定交渉の中止要請」も完全に無視され、広島県選出の岸田外相の責任は重大である。
 また、東京電力福島第一原発の事故が収束しておらず、多くの被害者が未だに苦しんでいるさなかに、他国への原発輸出を拡大して原発産業の延命を図ろうという姿勢は、きわめて非倫理的である。このような日本による国をあげての原発輸出政策には、国際的に厳しい批判が続いている。インドでは、政府による厳しい弾圧にもかかわらず、原発計画に対して地元住民が幅広い反対運動を展開している。
 今回の首脳会談と同時に、日本各地だけでなく、インドでは首都デリーと原発建設計画予定各地の住民、ロンドン、ニューヨークなどでも大規模な反対運動、そして国際署名が展開された。
 世界の人びとは日本に対して、「インドへ原発を売るな!どこにも売るな!」と呼び続けている。
 安倍政権の金儲けのための「原発輸出」と「核不拡散政策の転換」について、私たちは強く抗議する。そして、正式調印阻止へ向けて今後も闘うことを表明する。

2015年12月14日
戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション(コアネット/COA-NET)
ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、ピースボート、原子力資料情報室、
NPO法人ピースデポ

 

日印両国民を犠牲にする日印協定合意に抗議する
~新幹線方式への政府開発援助(ODA)供与と武器輸出を許さない!~


                                 2015年12月23日

              戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション(COA-NET)

 12月12日、原子力とともに新幹線方式へのODA供与と武器輸出について日印協定の合意がなされた。いずれも中国をにらんだ政治的なものであり、決して日印両国の国民が望んだものではない。この合意が両国民を犠牲にするものであることは明らかであり、合意取り消しを求める。
 まず、新幹線方式へのODA供与の問題は何か、を明らかにしたい。
 ODAは,商品輸出と資本輸出の呼び水であり,資源開発投資である。同時に政治的な戦略援助の側面もある。湾岸戦争や9・11テロ事件という国際的な紛争の影響を受け、ODAは国益追求の手段として純化してきた。今年2月にODA大綱が改定され、開発協力大綱として純化の度合いを深めた。援助という名目さえ放棄してしまったのである。開発協力大綱の問題点は4点ある。
第1は,要請主義から提案型への変更である。「日本の判断でより主体的に援助する」というものだ。第2は,国益が明記されたことである。ODAはもう援助ではないとの宣言だ。第3は,軍支援を解禁したことである。ODA大綱にあった軍事利用の制限がほぼ取り払われ,禁止原則は空文化させられている。第4は,安全保障への傾斜が強まったことである。総じて,外交と戦争の道具としてODAの戦略的活用が謳われているのだ。
日印協定での合意は開発協力大綱を発動させる場となる。原子力協定、新幹線方式の導入、防衛装備品・技術移転協定などが主な合意内容であり、前述の4点の問題点がすべて該当するからである。狙いは中国への対抗するためであり、だからこそ経済と安全保障両面での合意がなされた。
日本と中国がインドネシアの新幹線建設をめぐって受注競争をした。日本は官民で売り込んだが、中国の攻勢に勝てなかった。巻き返しをはかる日本は、破格の円借款条件(償還期間50年、据置期間15年、利子率年0.1%。インドの地下鉄への円借款条件は償還期間30年、据置期間10年、利子率年1.40%)で新幹線方式の合意を得た。総事業費約9800億ルピー(約1兆8000億円)のうち81%の1兆4600億円が供与される予定だ。
「中国に高速鉄道をつくらせるより約40%割高だが、我々は日印関係の多様な価値を考慮し新幹線を選んだ」とインド政府高官が語ったように、合意には経済合理性より政治的対応が優先されている(日本経済新聞12月13日付)。中国をけん制するためにODAをつぎ込むというわけだ。まさに戦略的ODAである。
はたして事業の採算性はどうだろうか。新幹線の運賃は2300ルピー(約4200円)と想定されているが、同区間の現在の運賃は最安200ルピー(約360円)であることからすると、問題は多い。圧倒的な貧富差があるインドにおいて新幹線建設の必要度は小さく、まず在来線の整備などが優先されるべきであろう。新幹線への円借款はインド国民へ負債を増やすだけなのだ。
さらに、地下鉄建設などインフラ整備として2015年度に過去最高の4000億円規模の円借款、大型案件に日本企業が関与できるようにするため総額1兆5000億円規模の金融特別枠も合意されている。新幹線や地下鉄など大量の電気を必要とする。その電力確保のために原発建設が前提とされており、原子力協定が同時に合意されたのはこの意図もある。日本の税金がインドへの経済的侵略に使われるのだ。
次に武器輸出についてはどうか。
安全保障でも対中国のための合意がなされた。防衛装備品・技術移転協定及び秘密軍事情報保護協定に署名が行われ、武器輸出に道を開いたからである。これによって飛行艇US2の輸出が進展する。海上救援と海賊取り締まりがUS2導入の目的とされるが、その長い航続距離にはマラッカ海峡やインド洋も含まれることから中国をにらんでいることは明らかだ。他にも、米印海軍の海上共同訓練に日本の海上自衛隊が継続して参加することも合意されている。
昨年4月1日に武器輸出3原則に代わり防衛装備移転3原則が閣議決定され、実質上全面禁止であった原則から条件が許せば輸出可能となる原則へと緩和された。その条件も厳格なものではなく、抜け穴だらけなのだ。そして、2月10日の開発協力大綱閣議決定と続き、ODAの軍事利用解禁と安全保障への傾斜へ突き進んでいる。
これまで明らかにしてきたように、合意には原子力協定とともにODAおよび安全保障協力についてもそれぞれ深刻な問題がある。それはすなわち、日印両国の国民に損失と被害をもたらし、生活を脅かすことになる。よって、許すことはできない。合意の取り消しを求める。