設立宣言

『戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション』設立宣言

                           2014年12月12日                           

「コトパンジャン・ダム被害者住民を支援する会」は、「2001年7月30日沖縄での声明」の趣旨に基づいて結成された。この声明は、ODAが人権侵害を引き起こしたこと、よってODAを廃止すること、さらに被害からの回復を求めること、および被害者住民の闘いを支援することを宣言している。そして、史上初となるODAを問う裁判が2002年9月に開始された。
私たちはこれまで被害者住民とともに、住民生活と自然環境を破壊した日本政府・援助機関の責任を追及してきた。10年以上にわたる裁判は、何よりも住民たちの社会・経済・文化的な原状を回復するための闘いである。それを法廷内外で支援することが私たちの第一の責務であった。
同時に、ODA加害国の市民である私たちには、この裁判闘争に託すもうひとつの目的があった。それは、「開発援助」の名の下に人びとの生活や環境を踏みにじる外務省・「援助マフィア」勢力に法的・社会的打撃を与え、これ以上の「住民泣かせの援助」をやめさせることであった。そして、被害者を出させないためにはODAを廃止することを訴えてきたのである。
残念ながら闘いはまだ道半ばである。それどころか、近年の公的資金を使った原発輸出推進の強化、軍事的支援やグローバル資本の利益追求を露骨に志向する「国益ODA」路線とODA大綱見直しの動きなど、日本のODAをめぐる問題は明らかに新しい段階に入っている。ここに至り、私たちはODA・公的資金を使った人権侵害と環境破壊を防ぐ新たな運動の展開を追求しようと決意した。
その第一歩として、2011年7月30日に「原発輸出をやめよ!ODAを問う国際連帯シンポジウム」を東京で開催した。開催の背景には、民主党政権誕生を契機にODA推進の「オール・ジャパン」体制を確立し、自衛隊派兵と両輪でグローバル資本の世界進出を後押しする方針が鮮明になるとともに、同年3月11日の福島原発事故後に原発輸出政策がより強化されたことがある。この第1回シンポジウムには、インドネシア、フィリピン、韓国の代表を招請し、日本の「国益」と称してグローバル資本のために投入されるODAの即時中止と原発輸出反対を求める国際的ネットワーク作りをめざすことを確認した。
2012年7月28日には、「第2回ODAを問う国際連帯シンポジウム」を大阪で開催した。パネラーとして、インドネシア・バンカ島の原発建設反対運動代表とインドの反原発闘争を日本に紹介して注目を浴びている福永正明氏(岐阜女子大学客員教授)、フィリピンのバタンガスから住民運動代表を招請した。議論を通じ、「国益ODA」をめぐる最大の対決点がODA・公的資金を使った原発輸出推進政策であり、最大のODA(円借款)被供与国インドにおける反対運動が重要な役割を果たしつつあることを明確にした。
そして、第3回目が2014年8月1日と8月3日に大阪で開催した「原発輸出反対!国際連帯シンポジウム」である。長年にわたって原発輸出反対運動をとりくんできたノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパンの協力を得てこのシンポジウムを開催し、インドにおいて反原発運動を組織しているCNDP(核廃絶と平和のための連合)のスンダーラム・クマール氏、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン事務局長の佐藤大介氏、福永正明氏、コトパンジャン・ダム被害者住民を支援する会弁護団の浅野史生氏をパネラーとして招請した。
第3回目のシンポジウムでは日印原子力協定反対署名を国際的にとりくむことが決定され、10日ほどで多数の反対の声を集めた。この力が日印原子力協定締結を先送りさせる一因となったことを特筆しておきたい。私たちは3回のシンポジウムを成功させ、ODAそのものを問いつつ原発輸出反対の運動を進めてきた。
ODAが謳う「援助」という美名はすでに無いに等しい。ODAとは、「国益」追求のための手段であり、日本経団連があけすけにいうように「企業が安心して国際的に活動するための基盤づくりを行う」ためのものである。この動きを止めなければならない。
現在の社会状況をみると、官邸主導の権力集中が進んでおり、その目指すところは軍事大国化と新自由主義改革にある、といえよう。その結果、憲法を否定する集団的自衛権の閣議決定に象徴されるように、社会の構造が根底から覆ろうとしている。ODAについても「援助」から「開発協力」へ、実質的に軍事と外交手段へと純化されようとしている。
現行「ODA大綱」は、建前として軍事的支援の除外などODA供与に一定の制約を課している。安全保障戦略と成長戦略に足並みをそろえた「開発協力大綱(案)」は、こうした歯止めさえも外し、さらにグローバル資本の利益につながるよう適用範囲を拡大させ、政府の恣意的なODA供与を可能にする。
この策動の先に原発輸出へもODAを使うことが想定される。すでに公的資金を使った原発関連の輸出が行われており、個別の商品や個別の資本の輸出から「システムインフラ輸出」へと拡大させる戦略のなかで原発輸出がその目玉となっているからである。
こうしてODA・公的資金はますます人権侵害と環境破壊を強めることになる。外務省・「援助機関」・グローバル資本の利益に従属した現行の枠組みを撤廃し、開発途上国の人びとへの支援や地球規模の問題への対処のあり方を抜本的に見直すべき、と私たちは考えている。
国際シンポジウムの成功は、戦争体制とグローバル資本優先の政策、そのためのODA活用と原発輸出推進という状況に対応したネットワーク強化の必要性をはっきりと認識させた。そこで、本日に私たちは新たな運動体『戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション』を結成することにする。
『戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション』は以下のことを主張し、みなさんに協力と参加を訴える。
  ・原発輸出(原発本体、関連資機材と技術、調査、人材育成など)に反対
  ・ODAの廃止とそれに代わる援助システムの構築
  ・上記の要求に賛同する人びとと連帯し、国際的な取り組みを強化